2012年5月13日日曜日

500兆円のジャンボジェットは意外と簡単に打ち落とせます

西日本全体に節電目標、電力不足の解消で-国富流出3兆円超

5月12日(ブルームバーグ):政府の第三者による需給検証委員会は12日、今夏の電力不足を解消するため、西日本の電力会社6社の管内で節電目標を定めるべきとの結論を盛り込んだ報告書案をまとめた。
国家戦略室のウェブサイト上に掲載された報告書案によると、2010年並みの猛暑となった場合、関西電力(予備率マイナス14.9%)や九州電力(マイナス2.2%)、北海道電力(マイナス1.9%)管内で供給不足が発生する見通し。「特に関西電力への融通余力を極力確保する必要がある」ことから、同委員会はこれら3社のほか、中部電力、北陸電力、中国電力、四国電力も含めた西日本全体の節電目標を早急に取りまとめるべきと結論づけた。
さらに、電力の融通を増やすことで夜間などにポンプで汲み上げた水を落として発電する「揚水発電」に必要な電力が確保でき、結果として一層の需給改善効果が期待できるという。特に、厳しい需給ひっ迫が予測されている関西電力の揚水発電所では、ポンプの性能の影響で夜間にダムを満水にできない場合があると指摘。朝の時間帯の節電や他社からの電力融通を増やすことで、揚水発電量の向上が可能になるという。
この報告書案では、ピーク時の電力需給のギャップが解消されたとしても、今後火力発電が増大することで液化天然ガス(LNG)や原油など燃料の調達コストがかさみ、国富の流出が続く懸念についても言及。すでに2011年度には約2兆3000億円が流出し、12年度には3兆4000億円、国民1人あたりでは約2万4000円に相当するとの試算も盛り込んだ。コスト増は電気料金の値上げにつながることから、政府は合理的な化石燃料の調達方法の対応を進めるとともに、発電にかかったコストの安易な価格転嫁を抑制すべきだと訴えた。
政府はエネルギー環境会議の下に電力需給検証委員会を設置して、第三者の立場から夏の電力需給を検証していた。委員会での決定を踏まえて、今夏の需給対策を決定することを予定している。野田佳彦首相は11日の内閣記者会とのインタビューで「最終的な需給ギャップがどれぐらいあるのかを踏まえて検証が固まった後に具体的な需給計画、どれぐらい節電が必要かの議論を早急にしていかないといけない」と語った。-- Editor: Hitoshi Sugimoto


電力の需給が逼迫(ひっぱく)するというのはどういう事か、正確に理解している人は少ない。

まずは、「同時同量の原則」を理解しよう!

「同時同量の原則」とは、消費される電気に対して発電される電気がリアルタイムで同量でなくてはならない、という原則をいう。もう少し具体的に説明すると、電力消費量(電力需要)と電力会社の発電量をピタリと一致させなければならないという原則である。この両者が、もし一致していないとすると、電力網の電圧や周波数が変動し、安定した電力が供給できない事態に陥る。このような事態を避けるため、電力会社は、気象予報や過去の実績などを用いて、電力需要を綿密に予測する。数秒単位の調整によって、電力消費量と供給量を合わせている。

「同時同量の原則」を満たせなくなると、大規模な停電が起こる。先に示した電力網の電圧や周波数が変動し、安定した電力が供給できない事態とは大規模停電のことを指す。ある地域で電力の供給不足が起こると、電力網の電圧が下がってしまう。電圧や周波数が一定しないと、何が起こるか。身近なところでは、家電製品などがうまく作動せず、壊れてしまう可能性を挙げることができる。パソコンを想像してみるとよい。電圧の急激な変化を我々が最も想定しやすいのは雷であるが、落雷がパソコンにとって致命的なダメージを与えるということは一般に理解されているだろう。電圧や周波数の急激な変動によってダメージを受ける機器が大規模工場の主要な生産機械であったり、病院の治療機械であったりする場合を想定してみるとどうだろうか。その場合に、極めて多大な経済的損失が発生したり、重篤な患者の生命に対する危険が生じたりすることになる。
こうした事態を避けるため、発電所から各需要家までの電力網には、その間に膨大な数の安全装置が付けられている。我々にとって最も身近な安全装置は、ブレーカーである。このブレーカーという安全装置は、発電所から最も遠く、最終消費者である我々と最も近い。このような安全装置が作動すると、影響は電気を使いすぎた最終消費者にだけ及ぶ。これに対して、発電所に近い安全装置が作動すると、停電は極めて広範囲に及ぶことになる。

W(電力)=V(電圧)×A(電流)

W(電力)を供給するには、常に(リアルタイムで)最善の発電量調整が必要である。電気が足りない状態というのは、水が足りない状況とは根本的に異なる。水は水道管に圧力をかけて各家庭に送ることができる。この場合、リアルタイムで最適の水量を決定しなくても供給体制に致命的な悪影響は生じない。しかし、電力の場合、「同時同量の原則」という宿命を背負うので、午前中に余っていた電力を午後に融通するということは不可能である。


消費電力が発電電力量を上回ると、何が問題なのか…

需要が供給を上回った状態を水で考えてみると、午前中には水を供給できなかったが午後には他から融通してきて供給できる状態になったとすると、水圧をかけて各家庭に水を送ることが可能である。

これに対して、電気の場合、水道管のように圧力をかけて需要先に届けるのではなく、常に(リアルタイムで)需要家が発電所から電気を吸い上げている状況をイメージしなくてはならない。電気の需要が現実に存在する以上、どこかの発電所がダウンしても、需要家はネットワークで繋がった他の発電所から常に(リアルタイムで)電気を要求し続ける。

そして、とある発電所の電力供給能力が需要に追いつかず、ダウンしてしまうと、そこが供給するはずであった電力需要は、瞬時に他のダウンしていない発電所から電力を吸い上げようとする。そうすると、過剰な要求を受けた別の発電所も瞬時に電力供給の限界を迎えてダウンする。電力供給網を構成する全ての発電所は連鎖的に、瞬時にダウンすることになる。これが、「同時同量の原則」という宿命を背負った電力の瞬時連鎖的ダウンという最悪の事態である。このような状況を「波及連鎖」「電力不足ドミノ」「ブラックアウト」と言う場合もある。

連鎖倒産という言葉がある。ある一つの企業が倒産すると、その倒産企業と関連の深い企業が波及的に倒産する場合を指した言葉である。これは、論理必然の事象とはいえない。ある倒産企業と、連鎖倒産のおそれがある企業との関連性の深さは様々であり、連鎖倒産を防ぐ措置をとれるだけの体力の有無など個別事情を加味しなければ、連鎖して倒産する可能性は測りきれないからである。しかし、各発電所が発電網を構成し、ネットワーク化されている場合、負の連鎖の波及は必然的に発生する。

こうした発電網を100%に近い状況で稼働させることは、この発電網のうち1ヵ所の発電所でもダウンすれば必然的に全ての発電所が連鎖的にダウンするという危機的な状況で電力供給を行っていることを意味する。「昨夏は電力は足りていたではないか」という発言は、こうした電気の基本を分かった上で行って欲しいものだ。水不足と同じイメージで語られているとしたら、無責任極まりない発言であると言わざるを得ない。

その上で、国民に降りかかる追加負担についても

デフレの状況では、500兆円のジャンボジェット機を、2,3兆円のミサイルで撃ち落とすことも可能である。化石燃料購入費の3兆円と、さらに予期せぬ大規模停電による各損害を加えると、500兆円のジャンボジェットは粉々に打ち砕くことができるだろう。


「同時同量」が原則の電力網は、自然再生可能エネルギーを扱いづらい

スマートグリッドも構築には一定の期間が必要である。
急進的な脱原発の主張は、ジャンボジェットを撃沈するに十分なミサイルであろう。

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