2012年4月24日火曜日

消費税の益税・損税とは?

消費税納付の仕組み

消費者などが支払った消費税は、
消費者に財・サービスを与えて代金を受け取った小売業者が
いったん預かり、
小売業者自らが仕入れの段階で払った消費税分を差し引いて国に納付する。

取引段階の把握

商品は、多くの取引段階を経て、最終的に消費者のもとに届けられる。
例えば、ある輸入品については、

1 輸入業者が400円で国外から材料仕入れを行った

2 メーカーは、400円で仕入れた材料に付加価値を付けて、600円の製品にする

3 卸売業者は、中間マージンを200円載せて、800円の値を付ける

4 小売業者は、卸売業者から800円で仕入れ、200円の利益を狙って1000円の値を付ける

5 消費者は、小売業者の仕入れ値800円+利益200円の1000円で買う

1→2→3→4→5のそれぞれの→マークの部分で、消費税が賦課される。


左の図からわかる通り、
税率10%になれば、仕入れ価格も880円に上昇する。卸売業者と小売業者の力関係にもよるが、小売業者の規模が小さければ小さいほど、
仕入れ価格の値下げ要求は、卸売業者から跳ね返されることになる。

とはいえ、この880円での仕入れ価格に従来通りに200円の利益を載せて、消費者に価格提示できるかといえば、それが容易ではないことは明らかである。

そこで、小売業者は、どう動くか?

これまでの利益分200円を多少削って、顧客離れを防ぐ方向に走らざるを得ない。

これは利幅を削った実質的な値下げである。

増税分の損を小売業者がかぶる、すなわち「損税」である。
ここでは、卸売業者と小売業者との力関係で小売業者が泣くパターンを取り上げたが、
各取引段階のどの事業者の力が強いかによって、負担を押しつけられる事業者は様々。

力の弱い事業者は、泣かされる可能性が高い。
そこで、このような事業者を救うための制度、それが免税点制度や簡易課税制度である。

誤解も多く、注意が必要なのは、免税点制度などで、いわゆる「益税」が生ずるのは、
図でいえば、小売業者が納税する10円分の部分にとどまるという点である。
(零細)小売業者も、卸売業者から仕入れる段階では消費税を支払っている(840円を支払って仕入れている)。消費者から得た50円分の消費税がまるまる「益税」となるわけではない。

「益税」とは、免除分だけが免除を受けた事業者の利益となる制度である。

いわゆる「益税」批判は、冷静に考えれば、ほとんどの事業者にとって無関係な批判である
ということが理解できるだろう。

消費税率UPで税収は増えるか?

経済状況が現状のままなら、消費税率を上げても、どこかの取引段階の事業者が泣かされるか、垂直段階(1~4)の事業者すべてが少しずつ泣くかのいずれかである。誰かが泣いた結果は、多くは給与所得者である消費者の生活に跳ね返るという予測はたやすい。

デフレ下で増税するということは、こういうことだ。

さらに、泣かされる事業者を我々の実生活に即して具体的に想定してみよう。

街の小売店さんを想像してみる。
彼らは、徐々に低下していくばかりの地域経済にとってどのような役割を果たしているか。
地域経済が循環するために現状で必死の努力をしているのではないか?

確かに、従来通りの商売の仕方で、従来通りにメシが食えるほど甘くはないと、
彼らの努力不足を指摘することはできるだろう。
その批判は全くの的外れであるとは言えない。

しかし、地域に根ざした商店主が消えてしまう状況を想像すると、
批判ばかりに終始していては、
最終的に訪れる結末は、極めておそろしいことにならないか?

地域活動の実際の担い手は誰なのだろう。
まさか、行政のみの活動で、全ての行政需要が満たされていると考える者はいないだろうが、具体的に地域活動の担い手を捉えることができている人は少ない。

根本的な状況把握を怠り、批判の中身を吟味せず、うわべだけの議論に追随していると…
ついには、自分の首をしめられることになる。


消費税は景気に左右されない税金?
新聞記者という人種は、自分で論理を組み立てる能力のない方々のことのようだ。


いわゆる「輸出戻し税」についても、本質を把握する必要がある。
そうすれば、大手マスメディアが消費税率UPを煽る背景がみえてくるだろう。


1997年に景気が悪化したのは、消費税率UPのせいではないという主張は、
1998年に年間の自殺者数が3万人を超えて、その後高止まりしている事実の前に、
全く説得力を欠くものである。

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