2012年4月26日木曜日

新日鉄、韓国ポスコと自社元社員提訴、鋼板製造技術を不正取得・使用


新日本製鉄は4月25日、方向性電磁鋼板に係る自社技術に関して、営業秘密を不正に取得し使用しているとして、韓国の鉄鋼大手ポスコとその日本法人を東京地裁に提訴したと発表した。不正競争防止法に基づき、1000億円の損害賠償と方向性電磁鋼板の製造・販売差止めなどを求めている。
新日本製鉄は同時に、ポスコによる営業秘密不正取得に加担したとして、元社員に対しても、不正競争防止法に基づき損害賠償を求める訴訟を提起。さらに米国では、自社米国特許侵害を理由に、ポスコと現地法人に対して損害賠償と侵害差止めを求める訴訟を提起したとしている。
新日本製鉄とポスコは2000年に戦略的提携関係を構築して以降、研究開発や原料購入など多くの分野で成果を上げて、現在も提携関係にある。しかし、個々の商品分野では競合関係にあり、方向性電磁鋼板に関しては、ポスコに対し知的財産権侵害の警告などを行ってきたが、問題解決の端緒が見えず、提訴に至ったとしている。
電磁鋼板は、特殊な製造プロセスで磁気特性を向上させた高機能材料で、発電機やモーターなどの鉄心として広く使われており、特に「方向性電磁鋼板」は、一方向に磁化しやすい鋼板として、家庭用変圧器の鉄心に広く使用され変圧器の効率向上や送配電時の電力ロス軽減に貢献しているという。
2012/04/26(木)日経朝刊3面にも、新日鉄、不正取得でポスコ提訴との見出しが…

不正競争防止法の営業秘密不正取得行為があったと主張しての提訴らしい。

方向性電磁鋼板? 聞き慣れない名前だ。

分類: 鉄鋼用語(製品及び品質) > 鋼材(用途別)
番号: 3703
用語: 方向性電磁鋼帯
定義:
けい素鋼の結晶の磁化容易軸を圧延方向に配向させ、
優れた磁気特性を持たせた冷間圧延電磁鋼帯。
電動機、発電器、変圧器、その他の電気機器に用いられる。
なお、配向性を一段と高め、磁気特性を更に向上させたものを高磁束密度方向性電磁鋼帯という。
対応英語(参考):
grain-oriented magnetic steel sheet and strip


う~ん、わからん。
日経の用語解説の概要は以下の通り…
→方向性電磁鋼板 鉄の結晶の向きを一方向に揃えることで電気を効率的に変圧できる。
主に変圧器の基幹部品として使用され、利益率が高い。次世代送電網(スマートグリッド)
の普及が見込まれるため、市場が拡大すると見込まれている。

要するに、今後有望な素材というわけですね。

次世代送電網? また、聞いたことはあるが、実際にはよくわからない用語が…

次世代送電網(スマートグリッド)とは?
このダイアモンドオンラインの記事が面白かった。
次世代送電網「スマートグリッド」で期待される日本の電力技術

原発事故が起こる前の記事だ。その時点では電力が安定供給されている日本では、
スマートグリッドの必要性は低いとの指摘があると書かれている。状況は変わった。


スマートグリッドというのは、
電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網、
ということらしい。
専用の機器やソフトウェアが、送電網の一部に組み込まれている。
この送電網の一部に組み込まれる部品の基幹的な部分を、
今回の方向性電磁鋼板が担うということであろう、たぶん…。

ただ、スマートグリッドという、その定義は曖昧で、
いわゆる「スマート=賢い」をどの程度と考えるかは明確ではない、という。

そもそも、
オバマ政権が、米国のグリーン・ニューディール政策の柱として打ち出したことから、
突如として注目を浴びることとなった、いわば急造の概念の感が強いスマートグリッド。
管理人の、なんだか聞いたことはあるが、何のことやらわからないという感覚は、
万人の感覚ということで差し支えないか。訳知り顔に、「これからは、スマートグリッドだよ」
なんて人がいたら、これからは注意しよう、「はあ、そうなんですか」と簡単に感嘆しないよう。
従来の送電線は、大規模な発電所から一方的に電力を送り出す方式だが、
需要のピーク時を基準とした容量設定ではムダが多く、
送電網自体が自然災害などに弱く、復旧に手間取るケースもあった。
そのため、
送電の拠点を分散し、需要家と供給側との双方から電力のやりとりができる、
「賢い」送電網が望まれている。


スマートグリッド化を進めることによるメリットとしては、下記の4点が挙げられる。

http://www.kankyo-business.jp/topix/smartgrid_01.html より引用

1.ピークシフト(昼間電力消費の一部を夜間電力に移行させる方法)による
電力設備の有効活用と需要家の省エネ
2.再生可能エネルギーの導入
3.エコカーのインフラ整備
4.停電対策

一方で、スマートグリッドには欠点もあるとの指摘がある。
例えば、セキュリティ上の問題。
スマートグリッドのインフラには、高度な通信システムや技術が結集することになる。
そこに対する不正操作やウイルス感染などの対策はまだ不十分と言われており、
今後セキュリティの脆弱性の克服が必要になるだろう。

ふむふむ。だいぶ方向性なんとかという素材とスマートグリッドがわかってきた。

そこで、今回の訴訟に戻ろう。

日経の見出し
・長年の疑惑、突如証拠
・秘中の技術 流出に強攻策
とある。

まず、新日鉄がポスコを提訴できるに足る証拠を入手した経緯が面白い。

2007年10月、韓国大邱地検特捜部が、ポスコの技術を中国企業に売った容疑で
元ポスコ社員を拘束
2008年10月、刑事事件で有罪判決が確定と

当時の韓国国内では「国家機密の漏洩」とまで騒がれたが、
刑事裁判の過程で、この元社員が、
「流出したのはポスコの技術ではなく、新日鉄の技術」と主張って、
壮大な国家レベルのコントを展開だろう、これは。

新日鉄は、その刑事事件の判決文の中で今回の訴訟の対象となった
新日鉄元技術者の名前を発見し、この判決文書などをもとにして、
裁判所に証拠保全を求めた。
証拠保全を求めた先の裁判所というのは、日本の裁判所を指すのだろう。
2011年末には、(日本の)裁判官による技術者宅への証拠保全手続で膨大な思料を確保。
こうして、準備万端の上で、新日鉄はポスコを提訴したわけだ。

国家機密の漏洩だと騒いでいたら、
実は技術パクリの動かぬ証拠が出てきた。
さすがは韓国、いつも感動的なオチを付けてくれる。

見逃せない事実がもう一つ。

この、技術パクリ企業のポスコ、
第二次世界大戦の穂法の一環として、新日鉄の前身である旧八幡製鉄と旧富士製鉄、
旧日本鋼管(現JFEスチール)の協力をもとに作られた会社だという点である。

これを、恩を仇で返すということわざの最たる例として推奨したい。

ポスコは「(技術を朴ったのではなく、)10年かけて400億ウォン(約30億円)かけて開発した」
と主張したという。新日鉄は40年以上かけて、方向性電磁鋼板に係る自社技術を開発し
育ててきたというのに…。どう見ても以下の新日鉄の主張に軍配が上がるだろう。
「この技術を短期間で開発できるわけがない」

このような恥も外聞もないような事態が、とんでもない経緯で発覚してくる。
それが、韓国という国の実情なのだ。なんだ、いつもの事かとは思うが、
新日鉄の強硬姿勢には拍手を送りたい。


0 件のコメント:

コメントを投稿


社会・経済 ブログランキングへ